パソコンの文字処理は「文字コード」と「文字フォント」という仕組みを中心におこなっていますが、パソコンにインストールされている「フォント」はどのパソコンでもまったく同じということではありません。パソコンごとに異なる部分があります。
Windowsに標準で添付されているもはどのパソコンにもありますが、一般ユーザーが使うプリインストール機にはメーカーがサービスとして独自に入れたものや、インストール済みのアプリケーションソフトに付属していたものも入っています。
また、年賀状ソフトや画像処理ソフトを新たに購入してインストールすると、これらに付属している「文字フォント」もインストールされます。従って、パソコンは各ユーザーごとに異なる「文字フォント」も入っています。Windows機であればどのパソコンにもかならず「MS明朝」と「MSゴシック」および「平成書体」があります。
使用「文字コード」が一致しても、使用した書体フォントが相手または自分のパソコンにないと表示・印字がてきません。このような場合はソフトウエアにより自動制御で類似のものに置き換えるという処理がされます。置き換えたものを保存するとデータの文字情報も置き換えたフォントの文字情報に書き換えられます
「フォント」とは
明朝体、ゴシック体など文字の書体を「タイプフェース(type face)」といいます。同じタイプフェースのサイズ展開されたグループ(文字セット)を「フォント(font)」と呼びます。パソコンでは画面表示やプリンタ印刷で使う文字の書体情報(サイズ展開や変形など)を「フォント」といいます。「フォント」は書体ごとにファイルで提供されます。
「フォント」がなければ画面表示やプリンタ印字はできません。「フォント(font)」は、そのパソコンで使われている文字コード体系に対応している必要があります。Windows機では、Windowsの日本語入力システムが使用している文字コード体系に対応した「フォント」が予めインストールされています。
「フォント」は観点により以下の分類があります。
- 対象となる言語により「和文フォント」と「欧文フォント」
- 描画方式から「ビットマップフォント」と「アウトラインフォント」
- 文字書体には、ゴシック体、明朝体、楷書体、毛筆体など
一般的には「書体」の意味で「フォント」という用語を使いますが、Windowsの設定やマニュアルを読むときに「フォント=書体」になっていると意味が通らなくことがあります。厳密には「書体」は「タイプフェース(type face)」で、「フォント」は同一書体のサイズ展開された文字セット(集まり)をいいます。
「フォント」は「フォントファイル」で提供される
「フォントファイル」は一つの書体情報(サイズや変形)が記録されているファイルです。書体は、同じ明朝体でも「MS明朝体」や「JS明朝体」というようにデザインの違いがあります。「フォントファイル」もこのデザインインの違いごとにあります。
Windows機では基本ソフト(OS)をインストールするときに、必要最低限の「フォントファイル」もインストールされます。プリインストール機では当初より入っていることになります。Windowsでは「MSゴシック」「MS明朝」を標準で使用します。
「フォントファイル」は、自分の好みのものや必要なものを後から追加インストールすることができます。また、不要なものは削除することもできます。Windowsのコントロールパネルにある「フォント」機能で行います。
使っているパソコンにどのようなフォントが登録されているかは、[スタート-ボタン]→[Windowsシステムツール]→[コントロールパネル]→[フォント]アイコンをクリックすると一覧を表示します。また、各アプリケーションソフトの書式設定や装飾設定には文字書体の選択窓があり、登録されているフォントが表示されます。


文字書体のデザイン
文字書体には、ゴシック体、明朝体、楷書体、毛筆体などがあります。書体は文字の様式で自由にデザインすることができます。したがって、同一の書体でもデザインによるバリエーションがあります。また、どの書体様式にも当てはまらないアート系のデザイン文字もあります。書体のデザインは、作成者の創造物になり著作権の対象になります。
文字書体デザインの著作権は印刷会社や写植会社が多くのものをもっています。パソコンで使うフォントもこれらのものを土台としています。当然、パソコンで使うフォントも作成者の創造物で著作権の対象なります。市販やWebサイトで提供されるフォント集にはレタリングデザイナーなど個人が著作権をもっているものも多数あります。使用するときには必ずフォント集に添付されている注意書きを読んでください。利用方法によってはライセンスが必要な場合もあります。
原則として、パソコン内のフォントフォルダにあるフォントファイルを通常のコピー操作で他のパソコンに複写することはできません。著作権違反行為になります。
「文字フォント」は著作物です
「文字フォント」は著作物です。使用者の判断でかってにコピーして配布することはできません。ただし、元は既存フォントを使っても画像処理ソフトでデザイン化した画像文字は別です。書体にオリジナル性があればあなたの著作物になります。
平成書体(平成フォント)
財団法人日本規格協会文字フォント開発普及センターが開発した日本語標準フォントです。平成明朝(へいせいみんちょう)、平成角ゴシック(へいせいかくゴシック)、平成丸ゴシック(へいせいまるゴシック)などがあります。ハードウエアメーカーやソフトウエアメーカーが利用できるように公開しています。
文字の大きさの単位
印刷の世界では、文字の大きさは「ポイント」という単位を基準とします。1ポイントは1/72インチで、1インチは25.4mmです。
パソコンでは「ポイント、インチ、ミリ、ピクセル」などが使われます。ただし、「ポイント、インチ、ミリ」で指定した場合、必ず画面表示されるものが物理的にその長さになるわけではありません。画面上に表示される大きさは、ディスプレイの物理的なドットピッチ、グラフィックチップの解像度、基本ソフト(OS)の表示解像度の設定によります。
ピクセルは画像を構成する最小単位の点(画素)を指します。ドットは単なる点を意味し、「ピクセル」は色情報を持つ点を意味します。ディスプレイの物理的なドットピッチはディスプレイの性能により異なりますので、まったく同じにはなりませんが、各装置での誤差が一番少ない指定が「ピクセル(ドット)」指定です。
Webページ作成するときには「ピクセル(ドット)」は使わない方がよいとされます。これは、従来のブラウザやテキストブラウザでは、文字の拡大・縮小機能が効かなくなるためですが、現在のブラウザはページ全体を拡大・縮小するようになりました。
Webブラウザの表示文字
Webブラウザにはいろいろあり、各Webブラウザごとに標準とする表示文字サイズが異なります。テキスト文字表示が中心のページでは、閲覧するWebブラウザによりレイアウトの配置位置や間隔が異なります。Webページに文字を画像で配置するのこの現象を防ぐためです。
「Webブラウザ」はインターネットでホームページを閲覧するとソフトウエアで、以下のようなものがあります。その他画像を表示しないテキストブラウザ、文字データ読み上げる音声ブラウザなどがあります。
・Internet Explorer,・FireFox,・Opera,・Goole Chrome,etc
和文フォントと欧文フォント
和文フォント
日本語の「かな、カタカナ、漢字、記号」などを対象とするフォントをいいます。和文フォントには全角の英数字・記号も含まれます。
和文フォントには平成明朝体や平成ゴシック体など「平成フォント」と呼ばれるものがあります。日本規格協会のフォント開発・普及センターがフォントの健全な流通と普及を目的に策定したものです。パソコンメーカーやソフトハウスなどコンピュータ関連の企業が使いやすいようにライセンス提供しているものです。
和文フォント一覧の中に、先頭に@マークの付いたものがありますが、これは日本語の縦書き用のフォントです。
欧文フォント
英語、ドイツ語、フランス語など欧米で使われている英数字・記号を対象とするものです。
「イタリック体」と「斜体」の違い
イタリック体は英字の縦線をやや右側に傾けた形で全体のデザインをおこなった書体です。縦線をただ右側に傾けたものではありません。英字にはイタリック体という書体がありますが、日本文字にはこのような書体はありませんでした。
日本では英字も含め、斜めにした文字を「斜体」と呼びます。通常は右に傾いているものをいいますが、左に傾いているものも「斜体」といいます。コンピュータの英字書体指定では「イタリック体」と「斜体」ではデザインが異なります。「斜体」は標準的なフォントを表示制御で単に斜めしているだけのためです。「イタリック体」にはいろいろなデザインのイタリック体のフォントがあります。
ビットマップフォントとアウトラインフォント
ビットマップフォント(bitmap font)
文字の形を点(ドット)の集合で表現するフォントです。ドットフォントともいいます。元となる字形は16×16や24×24のドットの集まりで表現します。高速な処理ができる反面、拡大・変形するとジャギーが発生します。グラフィックソフトで画像として作った文字はドットフォントと同じ意味合いになります。MS−DOSの時代は主にビットマップフォントを使いましたが、現在はアウトラインフォントを中心に使います。
アウトラインフォント(outline font)
文字データを輪郭線(アウトライン)で構成したフォントのことをいいます。字形をドットパターンではなく、基点を結ぶ直線、弧、曲線の数式情報として表現します。拡大・縮小は基本となるフォントを基に計算でおこないます。このため、拡大・変形が自由にでき、印刷のときのジャギーも発生しません。また、ビットマップフォントのように文字の大きさや解像度ごとにフォントデータをもつ必要がありませんが、処理にやや時間がかかります。
True Type トゥルータイプ
米アップルコンピュータが開発したアウトラインフォントのフォーマットです。米マイクロソフトはアップルから技術供与を受けてWindowsに標準搭載しています。WindowsではTrue Typeフォントドライバが標準で添付されているためアプリケーションソフトに関係なく画面と印刷の両方に使うことができます。ただし、OS側で画面表示と印刷の両方を処理するためパソコン側の負担が大きくなります。
TypeT タイプワンフォント Type1 font
アドビシステムが開発したページ記述言語、ポストスクリプト(PostScript)用のアウトラインフォントです。印刷業界では事実上の国際標準になっています。PostScript対応のページプリンターやイメージセッターに格納して使われます。フォントの仕様が公開されており、アドビ システムズ以外のフォントメーカーが自由に開発、販売できます。
ページ記述言語(PDL) page description language
パソコン上で作成した文書をページ単位で印刷するときに、プリンターに文字とグラフィックスなどの印刷イメージを指示するための言語です。レーザープリンター(ページプリンター)で使います。ページ記述言語には「PostScript」以外にも、PCL(米ヒューレット・パッカード)、LIPS(キヤノン)、ESC/Page(セイコーエプソン)などがあります。
プロポーショナルフォント proportional font
文字ごとに異なる幅に調整されているフォントのことをいいます。アルファベットには「i」や「l」と「m」や「w」のように幅に差のある文字があります。これを均等に配置すると字間が開き過ぎたり、詰まり過ぎたりします。欧文フォントは、通常プロポーショナルフォントになっています。プロポーショナルフォントに対し、文字種に関係なく等しい幅のフォントを「等幅フォント」といいます。
日本語の漢字やひらがなは単独では文字幅が一定していますが、日本語の表記には仮名、漢字、カタカナ、英数字が混在しますので字間調整(カーニング)がおこなわれ表示します。
半角文字と全角文字
1バイト(8ビット)の英数記号文字は、2バイトの日本語文字の半分(表示幅)になります。現在はプロポーショナルフォントを使い、フォントのサイズ(文字の大きさ)や文字間隔の表示制御がされるため、必ずしも一定の幅にはなりません。
JISコード以外の文字フォント不都合
JIS文字コードの規格は、国語審議会の答申による常用漢字や表外漢字の規定を元に改訂されます。ユニコードなどは標準化団体などが作ります。このため「漢字」表記の問題が起きます。旧字体と新字体、日本語固有の特殊記号など。また、標準化団体が策定しているものでは、日本語の漢字と中国語子漢字の問題があります。
、
例)
「葛飾」と「逗子」はWindows XP機では下図左のように表示・印刷されますが、Windows Vista機または7機では表示は下図右のようになり、印字はWindows XP機と同じになります。ただし、Windows XP機でもメイリオフォントを使っている場合は下図右と同じになります。


この項目解説文先頭の「葛飾」と「逗子」の字体は、Vista機かXP機か、メイリオフォントを使っているかいないかで表示される字体が異なります。印字も各書体の最新の印字用フォントが入っているかにより変わります。
上記と同じようなことが起きる漢字には「茨」「晦」「祇」などがあります。