OSシステムのファイル管理機能はシステム観点のもので、使用者利用観点のファイル管理には適さない部分があります。何らかの形式で使用者自身の利用観点でファイル管理することをおすすめします。
VistaからはWindowsの検索機が大幅に改善され、ファイル管理の強力な手段となります。ファイル管理は「整理・整頓」作業ですので、日常整理整頓が苦手な方はこの機能をマスターするようにしてください。
インデックス付けをして検索機能を使うからファイル管理は必要ないのではなく、検索機能をフルに活用して高速・高度な検索をおこなうためにもファイル管理が必要になります。
ファイル管理に関する考え方
業務用コンピュータではファイル管理の手段や方法に専門的な定義があります。パソコンで一般使用者がこれらの定義に沿っておこなう必要はありません。ポイントはユーザー自身のスキルにあった手段や方法で、自分が使用しているデータファイルの所在を把握していることです。
自動化検索機能派
Windows Vistaからはパソコン内の全データをデータペース化して検索する機能があり、ファイル検索機能が充実したものになりました。Windows 7ではさらに検索機能のインターフェースが改善されました。以前のファイル検索機能は探し出せなかったものや、使用者観点の抽出もある程度可能になりました。
バックアップ機能も付きましたのでユーザーアカウント名のフォルダー以下にある「ドキュメント」「ピクチャー」「ビデオ」「ミュージック」などのフォルダーにデータを保存しておけば自動的にバックアップをとることができます。
手動整理整頓派
自分の使い慣れたファイル管理ソフトを使い、自分でデータの整理方法や整理体系を考え行っている場合です。難しいことではありませんが、ファイル管理ソフトの使い方に精通することやパソコンのファイルに関する基本的な知識が必要になります。また、性格的に整理・整頓作業をできるタイプの方向きです。
最低限の管理は必要です
一般ユーザーの場合、「ファイル管理(整理)」とは「自分で作ったデータファイルの管理(整理)」ということになります。パソコンでは簡単にデータファイルを作ることができます。検索機能で探せばよいと無秩序に保存していると、どこにどのようなフォルダー作り、どのようなファイルを保存したかわからなくなります。
階層が異なれば同名のフォルダを作ることができます。フォルダが異なれば同名のファイルを作ることができます。同名や類似名称のフォルダやファイルがあちこちにできることになります。時間がたてばたつほど、検索機能で探しても同じような名称と内容のファイルがいくつも検出されることになります。
現在は、ファイルに含まれる単語や文節でも検索できますが、類似文書のファイルはほとんどの場合部分比較では全体を把握できません。最終的には読み出して内容を詳細に比較することになります。
時間が経過したファイルを検索機能を使って探しだし、整理しようとしても時間と手間がかかり、実質おこなうことはできません。結局、整理もできず、かといって消去することもできず、使われないファイルが大量にハードディスクに溜まることになります。
使用者が作成したフォルダとファイルは使用者が把握していなければ誰も分かりません。パソコンの中にあるではトラブルが起きたときに大きな問題になります。
トラブルが起きたときに影響します
トラブルの復旧作業では、作業をおこなう前にデータファイルの退避(バックアップ)が必須です。ファイル管理(整理)が行われていないシステムでは、使用者がデータファイルの所在を把握していないため、データファイルがあると思われる場所(ドライブ)を丸ごとバックアップしなければならないため復旧作業に膨大な時間が必要になります。状況により、ハードディスクの初期化が必要になり、使用者が作ったデータはすべて破棄する形式でないと作業ができない場合もあります。
パソコン引っ越しのときに影響します
新しいパソコンに引っ越しをするときに問題となります。今回も、データの所在が把握できないためXP機からVista機または7機への引っ越しができないという問題が生じています。IEのお気に入りやOEのメールのデータは所在が決まっていますので、引っ越しの転送では自動的におこなってくれますが、使用者が作成したフォルダとファイルはXP機のどこにあるものをVista機、7機のどこに転送するかユーザーが指示しなければなりません。
「ファイル管理」は、単にファイルが探し出せればよいという問題ではありません。
ファイル管理ツール
ファイル管理ツールとしては以下のようなものがあります。これなのものを使用者のスキル・作業時間・費用などを考慮して組み合わせて使う方法をお勧めします。
Windowsの機能および付属ツールを使う
エクスプローラウインドウを使いWindowsの機能を利用する方法です。
市販のファイル管理ソフトを使う
市販のものは、主に「ディスク管理ソフト」と呼ばれます。個々のファイルを管理することよりも、ファイルを含めたディスクを保守・管理することが主眼です。ディスクをシステムを含め丸ごとバックアップできたり、ディスクの領域を分割し直したりと多機能にわたります。データファイルの完全抹消フォーマット機能が付いているものあります。
フリーウエアのファイル管理ツール群
フリーウエアにもファイル管理用のツールがたくさんありますが、市販ソフトのような総合的なものはなく個々の機能に限定したものです。バックアップツール、暗号化ツール、パスワードツールなど。フリーウエアは「自己責任」使用ですので、一般ユーザーがファイル管理ツールとして利用することはお勧めできません。
ファイル管理ツールの検索機能
Windows XPまでの検索機能はシステム観点の検索しかできないためやや力不足でしたが、Vista、7ではデスクトップ検索機能(インデックス機能)を標準で装備し、検索指示の条件設定も大幅に増え、ファイル管理の有効なツール(道具)として利用できるようになりました。
デスクトップ検索 desktop search
インターネットの検索技術を応用して、コンピュータに保存されているデータをデータペース化してそのインデックスを利用して高速に検索するシステムです。デスクトップ検索のソフトによってはインターネット上の検索結果と合わせ表示することもできます。
デスクトップ検索システムを導入する場合は、一番最初に、パソコン内データのデータペース化が必要です。この時間は対象データの量により変わりますが、1時間や2時間では終わらない場合もあります。
デスクトップ検索は、検索サイトが専用ツールとして公開しているものと、Windowsに組み込まれているものがあります。米グーグルの「Googleデスクトップ」は検索サイトのツールで、「Windowsデスクトップサーチ」はマイクロソフト社のツールです。
ユーザーアカウント名のフォルダー以下にある「ドキュメント」フォルダーなどは仮想フォルダで、実態は別の場所にあります。Windowsの検索機能で「すべての場所」を指定しますと、双方のものが表示されますので注意してください。必ず、データ保存先のフォルダーを指定しておこなってください。
ファイル管理のポイント
ファイル管理ポイントは次の事項になります。コンピュータのファイル管理には専門的方式や定義がありますが、一般ユーザーが使っているパソコンではその方式に従う必要はありません。使用者が把握し管理できる状態であれば問題はありません。
- 体系分類化したフォルダとファイル名を付ける
- 必ずバックアップを取る
- 不要なファイルは削除する
- ファイルのセキュリティ対策する
フォルダ名とファイル名の付け方
フォルダ名とファイル名は内容を把握できる簡潔で分かりやすいものにします。ファイル一覧では更新時間順、名前昇順、名前降順、サイズ順、拡張子別などに並び変えて表示する機能がありますが、この機能だけでは利用者観点の意図した並びにはなりません。
名前の昇順降順は文字コードの順番に並び替わります。更新時間順はファイルのタイムスタブでおこなわれ、そのデータ内容観点の日付と一致するとは限りません。Vista,7では他の条件指定と合わせて複合検索することになります。こうしたことも考慮して有効なファイル名を付ける必要があります。
体系化したフォルダーとファイル構成
パソコンを使って処理している作業内容を基準に区分けしますとアプリケーションソフトのデータファイルは各作業区分けフォルダに散在することになります。各アプリケーションソフトのデータファイル別にすると同じ作業(仕事)区分のフォルダが各アプリケーションソフトのデータフォルダに散在することになります。
一般ユーザーの方はパソコンを使って処理している作業内容を基準に区分けすることをおすすめします。この場合、一つのフォルダに複数のアプリケーションソフトデータが保存されることになります。アプリケーションソフトの標準設定(デフォルト)では、そのアプリケーションソフトで取り扱えるものしかファイル一覧に表示しません。ファイル一覧ウインドウの「ファイルの種類」指示欄で「すべてのファイル」を選択すると該当フォルダにあるすべてのファイルを表示します。
各アプリケーションソフトのファイル一覧ウインドウで表示されるのは、そのアプリケションソフトで取り扱うデータ形式です。他のものは同一フォルダー内にあっても表示されません。「ファイルの種類」指示欄で「すべてのファイル」を選択するとすべてのファイルを表示します。
不要なファイルは削除する
通常の削除はゴミ箱フォルダへの移動ですので、元の位置に復元することができますが、時間がたつとフォルダの構成やファイル構成が変わっているため復元できない場合もあります。「内容不明フォルダ」や「倉庫フォルダ」などを作り、この中に移動して管理する方法もあります。
システム観点の不要なファイルはWindowsの「ディスク・クリーンアップ」を使いおこないます。
必要なデータはバックアップを取る
パソコンでは、機器の故障でなくても、ある日突然ファイルが読み取れない、書き込めないということが起きます。また、誤って削除してしまうこともあります。ディスククラッシュが起きてハードディスクが一瞬にして使用不能になることもあります。仕組みの必然性、人為的なミス、機器の故障など、パソコンという機器の特性が有している危険性とは常に隣り合わせです。必ず「バックアップ」をとってください。詳しくは[バックアップ]のページをご覧ください。
ファイルのセキュリティ
現在のパソコンはネットーワーク利用が前提になりますので、ファイルに対するセキュリティ対策も必要になります。セキュリティ対策のポイントは情報漏洩とウイルス感染です。ネットワーク間でファイルやフォルダを共有する場合、共有する内容を明確にし管理する必要があります。
また、漏洩した場合でも、パスワードや暗号化がしてあれば中身を見られる可能性は極めて低くなります。マイクロソフト社のOfficeをはじめ、多くのアプリケーションソフトには、作成したデータファイルにパスワードを設定できるようになっています。ご確認ください。
Windowsには標準で暗号化機能が付いています。XPではフォルダーとファイルのみでしたが、Vista,7からはドライブ単位におこなえる「BitLocker」という機能も付きました。